人間は皆、幸福を求めている。誰も自ら不幸を求めて進んで不幸になりたいという人はいない。
しかし、幸福は求めても求めても手に入らない物である。手に入った思った瞬間に消えてなくなっていく儚いものである。幻のようなものである。
死は『私』というこの世にたった一人しかいない自分の存在が肉体ごと消えてなくなってしまうという究極的な不幸の形態であるが、生きている人間は近い将来必ず跡形もなく死んでしまうのでありその限りで人間は一人残らず皆不幸である。
この論理を適用すると過去に幸福だった人間はいなかったと考えるのが妥当である。
束の間の幸福を味わったものも決して幸福は長続きせずにいつの間にか皆死んでいったのである。
どんなに幸福を手にしたつもりであってもそれは錯覚である。
いずれ死と言う絶対的な不幸が訪れ幸福を掻き消すのだから。幸福を求めるのは本能だから当然のことである。しかし、それはどんなに求めても手に入れることができない。
せいぜい、後から振り返った時に『あの時は(今から思えば〕幸せだったなあ』と感じる位のものである。
逆に今はあの時に比べれば幸福だなあと思う位のものである。