先日、東京を訪れた時に古本屋で108円で購入した佐藤愛子さんの「こんないき方もある」という本を斜め読みしてみた。

- 作者: 佐藤愛子
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 1987/10
- メディア: 文庫
- この商品を含むブログを見る
佐藤愛子さんという作家をこの本で初めて知ったのだが、過去に直木賞を受賞し、芥川賞候補にも何回か選ばれている有名な作家である。
1923年生まれの92歳とだいぶ高齢になられる。
なぜ、この本を古本屋で手にとって買おうかと思ったかというと作家の文章に力があり、とてもしっかりしているなと思ったからだ。
この本はその名の通り佐藤愛子さんのエッセイなのだが、「時代」を感じられてなかなか興味深い。
今から30数年前に書かれた本なのだが、80年代というとまだバブルがはじける前で経済は右肩上がりを続けており比較的安定した時代であった。
時代についてこういう一般論を書いたり、語ったりするのは嘘くさくて好きではないがだいたい当てはまっているので便宜的にそうしておく。
そうした安定した時代背景があるからなのか、とても落ち着いた感じのエッセイとなっている。
彼女が今エッセイを書いたとしたら、また違った風体のエッセイになるのではないか?と思う。
本の楽しみ方には色々あると思うが、その一つには書かれた本がその時代をなんとなく表しているというのはあると思う。
その時代を表すというよりもその時代の香りをなんとなく感じさせてくれるという言い方の方がいいかもしれない。
これは、当然のことであり2016年に書かれた本と1970年に書かれた本が同じような内容になるはずではないのだ。
音楽も同じである。
ユーミン(松任谷由美)の若い頃の曲〈荒井由実の頃)を聴いているとなぜか懐かしい感じがしてくる。
これは、やはりその時代を曲の中に織り込んでいるからではなかろうか?
本も同じで現代に生きる若者と数十年前に生きた若者との感性はなんとなく異なっているのだ。
これが、時代の変化なのだと思う。
しかし、本質的な部分ではそれほど差がないはずである。
著書の中で佐藤さんは「女は本能的に愛されたいと願う生き物」だというようなことを書かれているがこれは現代においても十分に当てはまる普遍的な価値観のような気がしている。
そうなのだ・・「女は(好きな男から)愛されたい」のだ。
この気持ちを男は理解しづらい気がしている。
少なくとも私にはよくわからない。
それは、当時の男達も同様だったのではないか?と推測する。
つまり、男と女はずっと前から互いにすれ違っていたのだ。
現代の若者は愛という幻想にしがみつかなくなっている気がする。
愛とは幻のようなものだ。
誰もがそれを求める。
しかし、どうやっても見つからない。
手に入れたと思った瞬間、手の中を滑りおちてしまうような儚い泡のようなものだ。
ユーミンの「さみしさのゆくえ」は隠れた名曲だと思う。何とも言えない切なさや時代を感じさせてくれるのがいい。