社会人になる前は、まだ自分が何者でもないことに不安感を抱いていた。
自分が職業人として何者かにならないと不備があるかのように感じていた。
しかし、社会に出て10数年経ち徐々に見えてきたのは結局人間とは職業人として自立したところで何者でもないただの個人に過ぎないということである。
何かができる・・それによってお金を稼げるプロだと言えば聞こえはいいが所詮はほんのちょっとしたことだ。
他人の為に何かをしてお金を稼いで充実感を得ることは確かに幸せではあるが、それが目的化してしまうと人生は虚しくなる。
働くことよりも大切なことがある。
それは、今この瞬間を自分のものにすることだ。
今この瞬間を頑張ることではない。
将来こうなりたいから我慢するとか、こんな資格を取りたいから努力するとかそういう次元の話とは真逆なのだ。
自分の時間を大切に噛みしめてゆったりと生きるということである。
日本人はこうした生き方が決定的に下手なのだ。
海外を旅していると欧米人のバックパッカーや家族連れの旅行者とたくさん会うが彼らに共通しているのは仕事を離れたプライベートの時間を充実させるのが上手いということ。
彼らは仕事よりも大切なことをよくわかっている気がする。
仲間や家族と過ごし、語り合う喜びをわかっているし、何もしない贅沢で有意義な時間を過ごすことに価値を見出している。
私は働くことが素晴らしいとは全く思っていない。
確かに働いて自己実現をして、他人の役に立つ(ように思い込むこと)ことは楽な生き方だ。
しかし、楽だからこそそこから抜け出して自分の内部から響いてくる声に耳を傾けて仕事から離れる時間に価値を見出す必要がある。
仕事なんぞ所詮どれほどやったところで、どんなに頑張ったとっころでただの暇つぶしと自己満足に過ぎない。
職業人として自立するということの中にはプロとして恥じない良い仕事をするということと同時に仕事の虚しさをしっかり噛みしめて程よく仕事からも距離を置くことが含まれている。