人生とは旅である

日々の体験を通して考えることを大切にしていきます。

ジャズの持つリズムの問題

ジャズにおいてリズムの問題は一番重要な大問題である。

ジャズをよくわかっている人はリズムが悪いプレイヤーを軽蔑し、リズム感が良いプレイヤーを尊敬する。

ジャズでいうリズムとはいわゆるクラシックやロックでいう意味でのリズムと全く一線を画している。

例えばクラシック音楽はまずほぼ絶対に拍子の頭から入る。

いわゆる1つの拍子つまり、1拍には表と裏がある。1拍を半拍ずつに2分割できるということだ。

そして、クラシック音楽やロックなどは基本的に拍子の表から入る。

だから

だから

だから

ジャズに比べてはるかに簡単なのだ。そして、楽譜通り毎回必ず拍子の表から(頭から)入っていけば良いということは非常に気楽なことである。

ジャズの場合、ほぼ必ず拍子の裏から入る。拍子の裏から入る・・つまり半拍遅れて必ず入るというのは想像するよりずっと難しい。

だからみんなジャズができない。

ジャズは拍子の裏から入ることでスウィング感を出している。そこが他の音楽と決定的に違う。

そして、アドリブの有無。必ず拍子の裏から入り、決められた楽譜通りのメロディーと自己に完全にゆだねられたアドリブ
を行うことの難しさ。

大問題なのはジャズミュージシャンでもリズム感に物凄く実力の差が出ること。

いくら半拍遅れて演奏することができてもリズム感が良いとは全然言えない。

ジャズミュージシャンにこの人はリズム感が良いと思わせるレベルというのはとんでもなく高いレベルでのことだ。

並大抵のことではない。

いわゆる楽譜通りに弾いたり、吹いたりできるのは当たり前。

拍子の表から入るのも裏から入るのも自由にできるのは当たり前。

この時点で大抵のミュージシャンはつまずいて挫折する。

いわゆるクラシック音楽をやっている人がジャズをやっても全然ジャズになっていないのはよくあること。

っていうか当たり前。

クラシックのミュージシャンでジャズを演奏してまともに聴けるレベルに達している人をいまだに見たことがない。

すんごいリズム感が悪く聞こえる。アドリブもできない。

アドリブできても非常に原始的で簡単な内容でリズムが悪くて聞けない。

一方でジャズミュージシャンはクラシックができる人が多い。

というかもともとジャズミュージシャンでクラシックから転向してきた人はたくさんいる。

だからクラシック音楽の演奏も普通にできる人はたくさんいる。

もちろんお金をもらってクラシック音楽を聞かせるレベルにいるかどうかは別として、普通に演奏して上手いなあと思わせるレベルのジャズミュージシャンはたくさんいる。

世の中にはなめらかに速弾き(ピアノなど)、早吹き(サックスなど)できる人はたくさんいる。

しかし、いわゆるジャズミュージシャンをうならせるレベルでリズム感とアドリブセンスに優れた素晴らしい演奏ができる人は少ない。

だからクラシック音楽の演奏でいくら難しい曲をなめらかにかろやかに上手く弾けたとしても私は別になんとも思わない。

もちろん、トッププロのレベルは凄い。美しいし、上手いし、綺麗だし、凄い。

それはそれで明らかに凄い才能だ。クラシックは間違いが許されない厳しい世界だし。

なんだけど、やはりクラシックもロックも基本的には楽譜以上のことはできない。

ジャズのように瞬間即興芸術としての側面はもたない。

だから私からすると感動が薄い。

ジャズのライブでのトッププレイヤーの息をのむほど素晴らしいリズム感、音色、アドリブ、迫力、互いの息の合った駆け引きを含めた瞬間即興芸術としての美しさに比べたら

という感じである。

私の好きなニューヨークのジャズピアニストDavid Hazeltineがアルトサックス奏者のIan Hendrickson smithと組んでニューヨークのジャズクラブ「SMOKE」で行ったライブ演奏が素晴らしい。

このライブの中でthe best things life are free という曲をやっていて、録音の3:43~3:45の3秒間のhazeltineのピアノアドリブの目の覚めるような切り裂くような飛び跳ねるようなリズム感、スウィング感のある演奏。


www.youtube.com

これを聞いて瞬間即興芸術として醍醐味がわかるかどうかである。

わかる人にはわかるし、わからない人にはわからないだろう。

こういう演奏をジャズの世界ではリズム感の良い演奏、リズム感の良いプレイヤーという。

しかし、これほどリズム感のある演奏ができる人はジャズの世界でも少ない。

ちなみにこの曲は完全に4ビート。1小節に4分音符が4つ入るのが4ビートで、ジャズの典型的なスタイルである。

アルトサックスのian Hendrickson smithも話にならないほど上手い。めっちゃくちゃ上手い。これだけクールに綺麗な音色で美しいアドリブができる人は少ない。

大好きなサックス奏者である。ベースとドラムのリズムセクションも素晴らしい。

やはり、リズム重視のニューヨークのミュージシャンという感じ。

ちなみに現代ジャズの進化は凄い。

すべての世界で言えるのだけれどいわゆる数十年前に比べて何もかもが各段に進化している。

サッカーなどもマラドーナが活躍した80年代や90年代に比べて現代のサッカーはとんでもなく速いし、スピーディーで技術も上がっている。

マラドーナが活躍した頃のビデオを見てみると周りのプレイヤーなり、サッカーなりがなんだかちんたらしていて遅いなあという感じが凄くする。

テニスでも同じ。今のジョコビッチナダルなどトッププレイヤーに比べてマッケンローやナブラチロワが活躍していたころはだいぶ遅く感じる。

それはジャズの世界でも同じこと。

いわゆる昔のジャズしか聞かない人、わからない人、the 古典マニアみたいな人は多いけどそういう人達は進化に追いつけていない。

現代のトップオブトップの凄さをまるでわかっていない。

もちろん昔は昔で凄かった。しかし、すべては進化していく。

研究され、改善され、進化する。

物事も人もすべてそうだ。

だから常に頭をクリアにしていくためにも進化に追いつけるようにアンテナを張っておくべきなのだ。